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酪農の仕事は、極めて多種多様な作業で構成されているが、
説明し易いように考えてみると、大きく4つのフィールドに分けられると思う。
その4つは、経産牛の世話、育成牛の世話、子牛の世話、そしてその他の作業。
経産牛というのは、いわゆる乳の搾れる牛。
経済的に生産性のある牛、ということでこう呼ばれる。
経産牛の世話、というのは、搾乳、藁敷き、放牧、掃除など。
搾乳は一番骨の折れる作業。
うちの牧場は大体70頭前後をコンスタントに絞っていて、
全ての牛を絞り終えるのに約2.5時間かかる。
なぜそんなに時間がかかるのかと言うと、
牛一頭一頭、ストッパー(暴れ防止のため)をかけ、
4本の乳首を消毒液に浸し、
乳首をリサイクルペーパーできれいに掃除し(糞だらけ)、
蓄積された老廃物を出すために前絞りをし(各乳首5回くらい)、
そしてようやく搾乳機をかける、という作業を行うから。
そして牛の乳の出が悪くなると、
牛の乳をマッサージしながら最後のギリギリの手前まで搾りきる。
(ちなみにこの作業だけは、3ヶ月間ではやらせてもらえなかった。
牛一頭一頭タイミングが違う上に、搾りすぎても残しても牛が病気になるから)
搾り終えると、最後にもう一度乳首を消毒液に浸し、
搾乳機をパイプから引き抜き、次の牛へ移る。
この作業が約5~10分かかり、70頭分延々と繰り返す。
そして牛によっては、病気の乳首があったり、
乳の出ない乾乳があったりするので、
その都度タンクを接続したりキャップをはめたりして、
悪い乳を分ける。
これが終わるとようやく搾乳機の掃除に入る。
6つある搾乳機を一つ一つ水洗いして汚れをふき取り、
入り組んだパイプのスイッチを切り替え、接続し直し、
酸性・アルカリ性の二種類の洗剤を注入し、
先ほど使ったタンクを掃除し(水、ぬるま湯、お湯の三段階)、
消毒液を補充する。
そしてその他に使ったバケツを一通り掃除して、
子牛にあげる牛乳を温めるためのお湯を準備し、
搾乳機洗浄開始のスイッチを入れる。
(天気が良く、土の状態がいい場合は、この間に牛を外に出し放牧する)
そして直ちに牛舎の掃除へ移行。
一日一頭10キロ以上すると言われる牛の糞を尿溝と呼ばれる溝に落とす。
次に牛の下に藁を敷く。(この作業がかなりキツい)
牛の食べ残した餌も全て溝に落とし、通路にこぼした藁も箒で全てきれいにする。
そして最後に脱走防止のためのロープとチェーンをかけて、扇風機をかけて作業終了。
搾乳は3人がかりで行い、それ以外の仕事は全て俺一人で担当する。
経産牛の仕事が終わると育成牛の世話に移る。
ここでの作業は、餌やりが基本。
特殊なトラクターを使って餌を切り出すので、
この作業は、俺が上の仕事をしている間におばさんがやる。
そして餌に特殊なとうもろこしドーピングえさ(配合飼料)を混ぜて与える。
この牛舎の糞掃除は、他の特殊なトラクターを使って一気にやってしまう。
そして最後に子牛の世話。
たんぱく質、排便促進剤、ビタミンなどを少量混ぜた牛乳を、
子牛それぞれに合った量に調節して巨大哺乳瓶で与える。
遅い牛は一本飲むのに20分位かかる。
。。。
これで一日のうちの半分のシフトが終了。
午後4時からまた同じ作業をする。1日2回の搾乳。
最初のうちは作業が遅かったので
朝4時から始めて昼の11時位に終わった。
しかし最後は朝5時に初めて
10時には終わるようになった(その分違う仕事が増えたわけだが)。
実際はこの間に、牛の病気を発見したり、子牛が生まれたり、薬を飲ませたり
と細かい作業が入り、時間通りに終わることはほとんどない。
一見体力勝負な作業に映りがちだが、
実際は牛の病気の治療のタイミング、牛の発情の見極め、薬の調合、
子牛の種付けのタイミング、餌の量の調節などなど、頭を使う作業も多い。
その他の作業、というのは、サイレージ作り(長期保存用発酵飼料)、
草ロール作り、草刈り、たい肥作り、と沢山ある。
これらの作業は基本的に上記の牛の世話が終わってからするので、
完全なオーバータイム。特に50町以上ある土地の牧草を全て刈り込んで
草ロールにする作業は、日中目いっぱい働いても、短くて一週間はかかる。
その他の作業の詳しい内容は割愛するけど、
酪農は、5分で覚えられる作業が100も200もあるような仕事。
この膨大なプロセスをいくつも同時進行でやらなければ仕事が単純に終わらないし、
雑な作業をしたり遅れたりすれば、全て牛のストレス、という形で現れる。
(ファックスで二日ごとに送られてくる「体細胞数」でわかる)
この、頭と身体をフルに使って
テキパキと作業をする感覚がなかなか身に付かず本当に苦労した。
結局、変わり者のおばさんに3ヵ月バカ、と言われ続けることになる。
Imayu
正直子牛はカワイイ。。。^^→
羽田から、根室・中標津空港という聞き慣れない空港に飛び立つ。
飛行機の50%は空席。CAの平均年齢も高めだ。
「おお、さすが田舎。もう人が少ない。笑」などとのん気に考えながら、
ゆったりと本を読む。
山崎豊子の『沈まぬ太陽』。
この時俺は、これからの3ヵ月、
のんびりと日の出、日の入りを見るような時間が全く無くなるなんて、
予想だにしていなかった。
中標津空港に降り立つ。
人が少ない。
キョロキョロと辺りを見回していると電話がかかってくる。
「あんた?Imayuさん?今どこにいる?」
「今空港に着きました。もうロビーにいますよ?」
「あ~でっかい男か。いたいたいた。こっちだよ。」
ふと見ると、背の低い優しそうなおばさんと、
ジャージを着た少し太めの高校生が手を振っていた。
「良かった。優しそうな人じゃないか。」
正直どんな人が出てくるのかと不安だったけど、
少し安堵する。
お昼ご飯でお寿司をご馳走してもらい、
3人大分打ち解けてきた中、牧場に向かう車中での会話で、
カルチャーショックは始まった。
おばさん(OB)「あなたどこから来たの?」
Imayu(IM)「○○からです。」
OB「(深くため息をついて)あ~、○○か。。。そこから前に一回だけ人が来たけど、
そいつはてんでダメなやつだったなぁ。○○はダメな人間なんだよ。あ~あ、○○か。」
IM「はっはっはっ。じゃあその二人目にならないように頑張ります!」
OB「どうだか。ちなみに血液型は?」
IM「。。。!!!。。。 A型です。」
OB「ああ、ちょっとはマシになったか。
(ここで、いかにA型以外の人間がおかしいかを15分くらい語りだす)。
で、母親の血液型は?」
IM「・・・・・・・O型ですけど。。。」
OB「ハァ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~。。。ダメだこりゃ」
高校生「クスクスクス」
何かがおかしい。
そんな事に少しずつ気付き始めた住み込み酪農初日。
周りは一面、緑、緑、緑。
車はすでに40分近く走っている。
「俺は帰ることができるのだろうか。。。」
そんな不安を抱きつつ、
緑の大地、青い空、そしてさんさんと輝く太陽を、
俺は救いを求めるように見つめていた。
Imayu
ただいま。→
今日無事に住み込み酪農を終えました。
本当に沢山の事を学んだ。
酪農現場の辛辣さ。
産業間の隔壁と理不尽さ。
酪農の未来の雲行き。
「ビジネス」という概念と一次産業の整合性。
日本の酪農の問題点。
相互扶助の生きるコミュニティの重要性。
等々。
詳しいことは帰ってからPCでまとめます。本当に多くの事を学んだ。
ケガも、牛に踏まれた足の小指がポキポキすること以外は特に何もない。
最後、ようやく酪農という仕事の意味や全体像が見えてきて、役に立てるようになってきたところだというのに。
でも、ここでの特異な経験は、自分の価値観に大きな影響を与えるものになったであろう。
心身ともに辛かったけど、来て良かった。
明日、釧路に発ち、明後日から4日間、札幌に滞在し、本州に帰ります。
さぁ、次の準備を始めよう。
Eマちゃんは今日無事に1週間の勤務を終えて横浜に帰りました。う~ん、無事に終わってホッとしました。
滅多に来ない女の子(というか今は女性はフルタイムで雇っていない)ということで、おばさんのクレイジートークの標的にされつつも良く頑張った。
無事に帰宅した彼女から「こっちはなんて苦労の無い世界なんだろうと感じた」とメールが来た。
そう、こんな感情。
これこそ、自分が帰った時に俺が期待していることなんだ。
急激な環境の変化に身を置いて大きなギャップを感じることで、マクロな産業全体の相互関係だったり、マイクロな現場感情の隔壁を俯瞰できるようになること。
彼女が感じたことは勿論俺が感じるそれとは違うだろう。
でも、彼女がいい経験が出来てギャップを感じたこと、そして自分もそうなるだろうことを確信できたので嬉しかった。
あと1週間、頑張ります。





大学の同期、Eマちゃんがはるばる横浜から、1週間分酪農体験にやってきます。
遂に、遂にこの
牧場砂漠に一輪の華が!

さぞかし楽しい1週間になることでしょう

迎えに空港に行ってきまーす!
シャワーは浴びたので臭くはないはず!!





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先進国に生を受けたからには世界を相手に何か出来る事が、すべき事があるんじゃないか。「『日本人として』、世界という舞台で闘い、途上国の人々の未来を創る」という夢に向かって邁進中。ビジネスを通した途上国貢献の道を模索中。
''Watch your thoughts; they become words.
Watch your words: they become actions.
Watch your actions: they become habits.
Watch your habits; they become character.
Watch your character; for it becomes your destiny.''
※メール→imayu_canada[at]yahoo.co.jp(ブログ用)