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英語偏差値30からカナダ東海岸St.Thomas Universityに留学。卒業後2009年4月、某財閥系総合商社へ入社。
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「第一次産業は厳しい」

「酪農は精神的にも肉体的にもハード」

「日本の酪農情勢は悪くなる一方」

という言葉をよく耳にする。



ではどれほど大変なのか。

戦後進んだ農家の経営方針の変化(大規模化)はどのような結果をもたらしたのか。

昨今の原油価格、食糧価格高騰は、農家にどんな影響を与えているのか。






戦後の食糧需要の増加によって、
酪農家は機械化、大規模化を強いられた。


原始的な手搾りでは、1人1時間で2頭ほどしか搾れなかったのが、
レール型の搾乳機(ウチの牧場)によって、
1人1時間で2,30頭搾れるようになった。
更に技術化が進んでパーラーシステムが登場すると、
1人1時間で50~100匹搾れるようになった。




(パーラーシステム)



機械化は他方面にも進み、
増大する牛のエサを準備するためのトラクターが増え、
その牛から出る糞を除去するための車が増え、
何十、何百頭の牛に同時にエサを与えるため車が増え、
そのエサを移動するための車が増えた。

機械化によって、個人一人一人がマネージできる牛の頭数は
何十倍、何百倍にも増えたが、
それによって多額の債務を酪農家が抱えたのも事実。

そしてその額は何千万、何億という膨大なもの。
実際、上記のパーラーシステムを導入している農家は
何億という借金を当然のように抱えている。

高度成長期の日本では、このような多額の借金もできた。
国を揚げて、成長する日本経済、
増大する消費をサポートするための大規模化を推し進めてきた。

その結果、借金を返すために、
農家は12時間以上の労働をコンスタントに課すことになったが、
日本のバブル経済が崩壊するまでは、
酪農家も少しずつ借金を返していくことができた。



(こいつが宿敵の婆牛)


そこで酪農家を直撃したのが原油価格、食糧価格の高騰。


国家政策のもと機械化を進め、
機械への依存率が高くなった農家が
原油価格の高騰によって大きな打撃を受けている。

いまや全ての作業に原油を消費しなければならない酪農家にとって、
原油価格の上昇は酪農経営そのものを締め付ける要因となっている。



そして食糧価格の上昇。

牧草よりも乳量を上げるのに効率の良い配合飼料は、
ほとんどが輸入トウモロコシなどによって作られている。

機械化と同時に経産牛の生産乳量を高めようとしてきた酪農家は
配合飼料への依存率も高めていた。

今回の食糧価格高騰によって、
2003年からの配合飼料価格は25%も上昇した。

しかし、トウモロコシが高いからと言って牧草飼育に回帰して
絶対収入源の牛乳の量を減らすわけにも行かず、
利益が出ないのを分かっていながら配合飼料を使わざるを得ない。

原油価格、食糧価の上昇は酪農家にとってダブルパンチ。

※今年7月、北海道農業共同組合連合会(ホクレン)は、
畑作用の肥料の価格を75%上げることを発表した。



もはや昔ほどの利益がでない酪農家は、


高度成長期に抱えた多額の借金を返すことができない。


しかし一度上がった物価が元通りになることはほとんど期待できない。


しかも牛乳の価格(乳価)は下がる一方。


そして一度機械化した農具は高い費用を払ってのメンテナンスが必要。


結局更に借金を重ねての自転車操業を強いられる。




その結果農家は、更なる労働を強いられることになる。


跡継ぎのいない農家の平均年齢は上がる一方(現在50歳以上)。


そんな中酪農家達は身体に鞭を打って働いている。




「酪農30年以上やってきているけど、情勢は全く悪くなる一方なんだ。」

「もちろん、借金が出来た時期は酪農も景気が良かった。だから借金をしたんだよ。
みなさん(消費者)のニーズがあったんだもの。」

「辞めたい、なんて考えたことはない。
だって私達が辞めたら全ての経済が止まってしまうんだから。」



パソコンの前から一歩も動かずに、
できるだけ楽に金儲けをしようとして、
指先のワンクリックでお金を動かして、
その結果起こった原油と食糧の価格高騰。

そしてそのツケは全て第一産業の現場へ。
パソコンの前で実体の全く無い金融取引や
リスクコントロールをしている人間には決して理解しえない現場の苦しさ。



これほど如実に産業間の矛盾を感じたことは無かった。

一生懸命働いている人間が責任を押し付けられ、貧乏くじを引く歪んだ社会。

産業間の理解し合えない隔壁と、それ故に起こる矛盾した利害関係。



実際に酪農の現場で働いて、
今まで気付こうとしなかった、
理解しようとしなかった、
産業間の関係全体を俯瞰できるようになったと思う。

そして、これは世界レベルの途上国と先進国の関係の縮図であると感じた。


Imayu


サービス産業に生きる僕らも、
酪農家の苦労の上に成り立っています→ 

 

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だが、そんなサービス業ならではの方法で支援もできるさ!

事業起こしたり、ファンドであったり…

先は険しいが一歩ずつ頑張ろう

おれも会計の勉強始めます
HRK EDIT
at : 2008/09/29(Mon) 23:27:48
無題
>>HRK

ああ!!!HRKよ!!!その事については次の次辺りのエントリーで書こうと思っていたところだよ。

もちろん。国の補助金ばら撒き政策に限界が見えた今必要なことは新しい酪農の経営モデルの創造。

そこで絶対に必要なのは、「現場感を持って信頼関係を築くことのできる」サービス業のスタッフで・・・って、この前熱く語り合ったから知ってるよね。

もちろん。険しい分挑戦しがいがあるよこの道は。お互い頑張ろうぜ。

あの本買ったの?
Imayu EDIT
at : 2008/09/30(Tue) 00:08:12
すまん
先走ったな!


意外と研修が忙しくて、まだ注文してない

HRK EDIT
at : 2008/09/30(Tue) 18:16:43
無題
読まさせていただきました。
応援ポチッ!!!
サトシ URL EDIT
at : 2008/10/01(Wed) 00:47:12
無題
>>サトシさん

どうもありがとうございます。これからも宜しくお願いします。
Imayu EDIT
at : 2008/10/04(Sat) 01:11:10
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HN:
Imayu
年齢:
38
性別:
男性
誕生日:
1985/05/13
趣味:
ドラム・筋トレ・読書・旅行・絵描き・マグカップ収集 etc...
自己紹介:
英語偏差値30の高校時代を経て、カナダ東海岸、St.Thomas Universityに留学。政治科学と人権学を専攻。専門はアフリカ人権問題とドイツ政党政治。2009年4月付けで、某財閥系総合商社へ入社。

先進国に生を受けたからには世界を相手に何か出来る事が、すべき事があるんじゃないか。「『日本人として』、世界という舞台で闘い、途上国の人々の未来を創る」という夢に向かって邁進中。ビジネスを通した途上国貢献の道を模索中。

''Watch your thoughts; they become words.
Watch your words: they become actions.
Watch your actions: they become habits.
Watch your habits; they become character.

Watch your character; for it becomes your destiny.''

※メール→imayu_canada[at]yahoo.co.jp(ブログ用)
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